WISC-Ⅳの検査を受けて、WMI(ワーキングメモリ)が低い子どもの対策を考えます。日常生活の接し方、学習法についてのアドバイスを考えます。
①WISC-Ⅳについて
まず、WISC-Ⅳの検査とはどういうものかということを確認しておきましょう。5歳0カ月~16歳11カ月の子どもを対象にした、世界でも広く利用されている代表的な児童用知能検査です。
全検査IQ(FSIQ)を算定のほか、言語理解指標(VCI)、知覚推理指標(PRI)、ワーキングメモリー指標(WMI)、処理速度指標(PSI)の分野にわかれての指標が確認でき、子どもの得意不得意な能力を把握するのに寄与します。
WISC-Ⅳの検査に関しては、発達障害の診断の有用な補助として行われますが、この結果のみで発達障害の診断を行うわけではありません。
また、お子さんの場合、その日の気分・体調・集中力のほか、検査者との相性などの環境で検査結果に誤差が生じることも考慮にいれて、結果の解釈が必要です。
また個々の言語理解指標(VCI)、知覚推理指標(PRI)、ワーキングメモリー指標(WMI)、処理速度指標(PSI)の項目に関しては、本来、この項目が低いから、こうすればよい、というシンプルな問題なわけではなく、すべての項目のバランス、得意不得意・凹凸、また検査への取り組み方、また、WISC-Ⅳ以外からの情報(実際の診察、生育歴、性格等)も含めて、専門家から適格なアドバイスを受けることが大切です。
WISC-Ⅳの結果の解釈、そして理解とその生かし方には、たくさんの時間を要します。しかし、実際の現場では、検査の需要が増していることもあり、十分な時間をかけて、個々のお子さんに、個別に寄り添い、専門家が十分なアドバイスを提供するということが、なかなか難しい状況にあります。
そういった状況をふまえて、検査結果をうけとった保護者が、検査の結果をよりよく理解することができるお手伝いをできればと思いこの記事を書くことにしました。
わかりやすくするために、一つの項目にしぼり、シンプルに解説をこころがけますので、ほかの専門家からみるとそんな単純なものではないよ!と議論の余地があるかもしれませんが、ご了承ください。
また、WISC-Ⅳの検査の特性上、具体的な検査問題は開示してはいけないことになっていますので、検査の中身に関しての解説がないことはご了解ください。
②ワーキングメモリ(WMI)について
ワーキングメモリというのは簡単にいうと短期記憶力です。また、WISC-Ⅳでは「聴覚」による記憶力が評価の対象となっています。
例を出してみましょう。
「いまからわたしが、電話番号をいうのでくりかえしてください。045-78-361X。それではどうぞ。」
「045-78-361X」
覚えていられたでしょうか?ワーキングメモリが低いと、「045-7 …えーっと?」と覚えることができる桁数が少なくなります。
日常生活だと、たとえば、
「画用紙を切ったら、中に目玉をかいて、ここに貼ってね」
という指示が出たとします。ワーキングメモリが低いと、画用紙を切ったあと、次は、あれ、どうするんだっけ…?となってしまうと、いうことです。
授業中に先生が、
「1番のこたえは14、2番のこたえは3です」と解説をしても、
「1番のこたえは14、えーっと2番は…?」とわからなくなってしまうことも考えられます。
③ワーキングメモリが低いお子さんの対策
ワーキングメモリの対策はどうすればいいのでしょうか?
さきほどの例で考えてみましょう。
大人でも電話番号が覚えられるか自信がなければ、メモをしますよね。なので、こまめにメモをとらせる習慣をつけるというのが大事です。
予定、言われたこと、やることリスト、必要なことをしっかりメモをとる習慣をつけましょう。
また、学習に関してであったら、考えていること、過程などを、きちんと、文章など、目に見えるもので書き出すことが大事です。
途中式を書く。考え方をメモする。そういった作業を面倒くさがらずにおこなっていくことが大切です。
そして、指示を出す側(保護者、先生)は、一つひとつ短くて完結な指示を出すことが大切です。
「画用紙を切ったら、中に目玉をかいて、ここに貼ってね」ではなく、
「まず画用紙を切ってね。」 画用紙を切り終わったら、
「目玉をかいてね。」目玉をかきおわったら、
「ここに貼ってね」
といった具合です。
あるいは文章やイラストに順序良く書き出してみて、本人の見えるところに提示してあげることも対策です。
1.がようしをきる (ハサミの絵)
2. めだまをかく(めだまの絵)
3.はる (のりの絵)
といったかたちです。
集団生活では、率先して作業ができるお友達の隣の席に座って、わからないときに参考にさせてもらうなども一つの手段です。
後者に関してであれば、「1番のこたえは14、2番のこたえは3です」と解説するのではなく、
「1番のこたえは14」のあと、本人が答えを記入(まるつけ)したのを確認してから、
「2番のこたえは3」というように、一つひとつ区切って進めていくことが大切です。
なかなか集団指導では難しいことかもしれません。しかしながら、個別の指導や保護者のちょっとしたサポートが、日常生活や学習を、スムーズにする助けになります。
簡単ですが、ワーキングメモリの解説でした。
お読みいただきありがとうございます。
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